剣道の段位は初段に始まり、二段、三段と審査に合格することで昇段していきます。
初段、二段と順調に合格してきた人は、いよいよ三段を受審するというときがくると、次のような悩みを持つのではないでしょうか。
- 剣道三段の合格率ってどれくらいなのだろう。
- 剣道三段の実技試験で大切なことは何だろう。
- 剣道三段の剣道形審査は何を気を付ければ良いのだろう。
- 剣道三段の筆記はどのようなことに気をつけて書けば良いのだろう。
剣道三段は、指導者として認められる剣道四段の1つ下の段位です。
三段は、初段や二段と比べれば不合格になる人が多いのは事実です。とはいえ、四段の合格率と比較すれば、三段の合格率はとても高いです。
三段を受けるにあたり、過去の合格率というのは難易度を知る1つの目安となることでしょう。
そこで今回は「剣道三段とは?合格率や実技・形・筆記試験に受かるコツを解説」と題して、剣道三段の合格率と合格のためのポイントを紹介します。
最後まで読むことで剣道三段の審査に自信を持って臨むことができるようになるでしょう。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
目次
剣道三段の合格率は40〜50%
剣道三段の合格率は40〜50%ほどと言われていますが、体感としては80%以上ではないかと思います。
あまりデータとして公表しているところがないのですが、神奈川県剣道連盟が発表しているので紹介します。
神奈川県の三段の合格率は平成30年度が84%、平成29年度が81%になっていますね。
このようなデータから見ても、剣道三段の合格率は80%程度あると考えて良いでしょう。
剣道三段の審査は都道府県の剣道連盟が主催して執り行うため、地域によって合格率に差があるのは確かです。
それでも基本を守ってしっかりと審査に臨めば合格することができます。
この記事では、実技、筆記、剣道形に合格するためのポイントも紹介していますので参考にしてくださいね。
剣道三段の実技に合格するための5つのポイント
剣道三段の実技に合格するためのポイントは5つあります。
実技のポイント
- 礼法を大切にする
- 充実した気勢を出す
- 正しい剣道の足をする
- 残心を示して1本を打ちきる
- 有効打突を取る
三段の実技審査は、「基本」が身に付いているだけでは合格できません。
では、何が必要ななのか。
それは「有効打突」、つまり相手から1本を奪うことです。
全日本剣道連盟が定める「剣道・居合道・杖道称号・段位審査規則・同細則」という決まりの中に、「段位の付与基準」が書かれています。
三段の段位の付与基準は、「三段は、剣道の基本を修練し、技倆優なる者」と書いてあります。
つまり、「基本を磨き上げた技術」が必要ということです。
「基本」に加えて磨き上げた技術を証明するために必要なのが先ほど紹介した5つですので、それぞれについてより詳しく説明していきます。
【 1 】礼法を大切にする
剣道三段の実技に合格するためのポイントの1つには「礼法を大切にする」があります。
剣道は、「礼に始まり、礼に終わる」という言葉もあるくらい、相手に対する礼儀を大切にしているからです。
三段になれば二段のときよりもランクアップした「剣道の有段者」ですから、礼法が身に付いていて当たり前です。
しかし、三段くらいのレベルになると強くなることに一生懸命になってしまい、礼法が疎かになりがちです。
どれだけ強くても、どれだけ相手に打ち込めても、礼法のない剣士は昇段できません。
三段の実技審査で大切な礼法は、初段と同様に「相手と合わせて礼をする」ことです。
実技審査を始めるときと終わるときに礼をしますが、しっかりと相手を見て合わせて礼をしましょう。
もう1つ、大切なのに忘れがちなのが、「蹲踞を相手と合わせる」ことです。
せっかく同時に相手と礼をしても、抜刀してから相手より先に蹲踞してしまう人がいます。
蹲踞まで相手と合わせてすることで、礼法が身に付いていることにもなります。
このように、細かいことではありますが三段の実技では「礼法」がチェックされています。
三段合格のためにも、相手と合わせた「礼」と「蹲踞」をするようにしてくださいね。
礼法については、「剣道の礼法の重要性とは?立礼と座礼についても説明」でも紹介していますので合わせて読んでみてください。
【 2 】充実した気勢を出す
剣道三段の実技に合格するためのポイントの2つには「充実した気勢を出す」があります。
充実した気勢とは、言い換えれば「大きな声」と「自分から打っていく姿勢」ですね。
剣道には「気剣体の一致」という言葉があります。
「気持ち」「剣」「体」の3つが揃っていないといけないということです。
また、1本になる条件にも「充実した気勢」は含まれています。
つまり、いかに上手に相手を打つことができても、声が出ていなければ1本にはならないということです。
このように、三段の実技に合格するためには、「大きな声を出して積極的に打っていくこと」が大切ですので、日頃の稽古から実践するようにしましょうね。
大きな声を出すことの大切さは「剣道の掛け声には意味があった!種類や効果を知れば説明できる!」で紹介していますので合わせて読んでみてください。
【 3 】正しい剣道の足をする
剣道三段の実技に合格するためのポイントの3つには「正しい剣道の足をする」があります。
先ほども紹介したとおり、剣道は「気剣体の一致」が大切です。
剣道の足ができずに打った打突は、1本とは認められません。
また、踏み込まずに打った打突も1本にはなりません。
つまり、正しい剣道の足からしっかりと踏み込んだ打突をすることが三段の実技審査に合格するために大切です。
足さばきについては、「剣道の足さばきの種類とは?練習と説明方法も解説【脱・初心者】」で紹介していますので合わせて読んでみてください。
【 4 】残心を示して1本を打ちきる
剣道三段の実技に合格するためのポイントの4つには「残心を示して1本を打ちきる」があります。
剣道の打突は残心を示すまでが1つの技だからです。
試合でも残心のない打突は1本には認められませんし、審判が旗を挙げたあとに残心がなかったことが分かった場合には、取り消しになります。
このように、剣道では残心がない打突は1本になりません。
三段の実技審査でも打突をした後は必ず残心を示すことが大切なので、日頃の稽古から習慣をつけておきましょう。
【 5 】有効打突を取る
剣道三段の実技に合格するためのポイントの5つには「有効打突を取る」があります。
つまり、相手から1本を奪うということです。
先ほど紹介いたとおり、三段の付与基準は「基本」に加えて「技術」が高いことです。
技術の高さをアピールするためには、相手から1本を奪うことが必要です。
完璧な合格を目指すなら、自分から打つしかけ技で1本、相手が打ってきたところを返す応じ技で1本を奪うことができると文句なしでしょう。
ただし、もちろんこれまでに紹介してきた4つのポイントをクリアした上での話です。
有効打突が奪えても、礼法や残心ができていなければ不合格になるので注意しましょう。
剣道三段の形に合格するための4つのポイント
剣道三段の剣道形に合格するためには、4つのポイントを知っておくことが大切です。
剣道形のポイント
- 大きな声で発生をする
- 剣道形の流れを覚える
- 大きくと小さくのメリハリをつける
- 間違えたときは挙手をしてやり直す
三段の合格基準は「基本」ができていることなので、形審査でも、大きな声が出せているか、剣道形の流れを理解しているかという基本が重要です。
剣道形の基本を押さえておけば問題なく合格することができます。
【 1 】大きな声で発生をする
剣道三段の剣道形に合格するためのポイントの1つには「大きな声で発生をする」があります。
声を出すことは、声が出ない病気ではない限り誰にでもできることだからです。
剣道形には、打太刀であれば「ヤー」、仕太刀であれば「トー」という、かけ声があります。
この発声をするときには、しっかりと大きな声を出すことが大切です。
実技審査でも大切になる「充実した気勢」ですね。
しっかりと大きな声を出して、初段にふさわしい気持ちをもっていることをアピールしましょう。
【 2 】剣道形の流れを覚える
剣道三段の剣道形に合格するためのポイントの2つには「剣道形の流れを覚える」があります。
剣道形の審査なので、流れを覚えていないのは問題外になってしまいますよね。
三段では日本剣道形の1本目〜7本目までやるのが一般的ですが、細かいところまで知らなくても一連の流れができれば問題ないです。
最後まで間違えずにやることができれば、問題なく合格できます。
剣道の理合と呼ばれるところまでできなくても、間違えずに最後までできるように流れを覚えておきましょう。
【 3 】大きくと小さくのメリハリをつける
剣道三段の剣道形に合格するためのポイントの3つには「大きくと小さくのメリハリをつける」があります。
剣道形は、ゆっくりとした動きで動作を大きくすると堂々とかっこよく見えるからです。
ゆっくり大きくやれば、間違えにくくなります。
もちろん、小さくやるところ、少し早足になるところはありますが、それ以外はゆっくり大きくやるようにしましょう。
たとえば、6本目の打太刀の小手と仕太刀の小手払い小手は、小さく速く打つところですね。
一方で7本目は、打太刀は大きく面を切りにいき、仕太刀は胴を抜きます。
このように、ゆっくりと大きく間違えないようにやることで剣道形は充分に合格することができます。
【 4 】間違えたときは挙手をしてやり直す
剣道三段の実技に合格するためのポイントの4つには「間違えたときは挙手をしてやり直す」があります。
間違えてしまったときにやり直さずに続けてしまうと「剣道形を覚えていない」と思われてしまうからです。
間違えてしまったときは、審査員の方を向いて手を挙げて間違えたことを伝えます。
やり直すときは、間違えてしまった本数の最初からやり直すようにします。
たとえば7本目の途中で間違えてしまったときは、手を挙げて申告し、互いに9歩の間合いに戻ります。
そして7本目の頭からやり直すようにしましょう。
三段の剣道形の審査は、1回間違えたくらいで不合格になることはありません。
間違えてしまっても焦らずに、しっかりと手を挙げて申告してやり直すようにしてくださいね。
剣道三段の筆記試験に合格するための3つのポイント
剣道三段の筆記試験に合格するためには、3つのポイントを知っておくことが大切です。
- 自分の考えや経験を書く
- 空白を残さないようにする
- 剣道の知識を身につけておく
筆記試験は、どうやって書いたら良いか分かりませんよね。
本やインターネットで調べて書くと思いますが、「他の受審者も同じように書いてくる」のです。
あなたが書く筆記試験の内容を他の受審者の解答より良いものにするためには「自分の考えや経験を書く」ことがとても重要で、これができるだけで筆記試験には合格できます。
自分の考えや経験を書くメリットは他にもあり、文字数を増やすことができます。
筆記試験では、指定された用紙の80%以上は記入しないといけません。
解答用紙の80%以上を書くためには、問題に対する答えに加えて自分の意見や体験を書く必要があります。
審査によっては先生から記入した内容に対して質問されることもありますので、その質問に答えられるように、日頃から剣道の知識を身につけておくことが大切です。
【 1 】自分の考えや経験を書く
剣道三段の筆記試験に合格するためのポイントの1つには「自分の考えや経験を書く」があります。
自分の考えや経験を書くだけで、他の受審者と違う内容にすることができますし、文字数を増やすことができるからです。
たとえば「有効打突について説明しなさい」という問題が出たとしましょう。
このときただ単に、「竹刀の打突部で打つ」とか「刃筋正しく打つ」と書くだけでは用紙に空欄が多くなりますし不十分です。
答え方の例としては、
有効打突とは、『剣道試合・審判規則』『同細則』の規則第12条に定められる、「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの」をいいます。「刃筋正しく」というのは、竹刀の打突部が相手の打突部位を捉えていることをいいます。……(以下、省略)
というように有効打突について詳しく丁寧に書くことで、用紙いっぱいを使ったあなただけの解答を書くことができるようになります。
【 2 】空白を残さないようにする
剣道三段の筆記試験に合格するためのポイントの2つには「空白を残さないようにする」があります。
解答用紙に空白をつくることは、充分に答えたことにはならないからです。
たとえば先ほどの「有効打突」を例にしてみましょう。
ポイントは、「結論」→「理由」→「具体例」の順番に紹介することです。
文字数も増えますし、何より「分かりやすい文章」になります。
有効打突とは、「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの」をいいます。(結論)有効打突については、『剣道試合・審判規則』『同細則』の規則第12条に、先ほど示したように定められています。(理由)相手の打突部位を竹刀の打突部で刃筋正しく打突できていても、声が出ていなかったり姿勢が崩れていたりしては有効打突にはなりません。また、たとえば返し胴を打つときに、弦が上を向いた状態で打突してしまうと、刃筋正しく打てたことにはならないので有効打突とは言えません。(具体例)このように、充実した気勢と適正な姿勢で刃筋正しく打突部位を打ち残心を示すことで、はじめて有効打突として認められるのです。(まとめ)
このように書けば、文字数も多くなるので空欄を残さずに書けます。
ぜひ実践してみてくださいね。
【 3 】剣道の知識を身につけておく
剣道三段の筆記試験に合格するためのポイントの3つには「剣道の知識を身につけておく」があります。
剣道の知識を身につけておくことは筆記試験に解答するために必要ですし、審査員から解答した内容について質問されることがあるので、答えることができるようにしておく必要があるからです。
筆記試験を書くために本やインターネットの内容を丸写ししただけでは、あなたの知識になっていません。
筆記試験の目的は、剣道の知識を増やすことです。
もし審査員から質問されて答えることができなければ、知識として身に付いたことにはなりません。
審査員の質問にも答えられるように、しっかりと問題に対する知識を身につけておきましょう。
先ほど紹介した「結論」→「理由」→「具体例」の順番で書くようにすると、理解も深まり自然と知識が身に付くようになるのでオススメです。
日本剣道形の三段に関わる1本目~7本目までの流れや注意点、筆記(学科)に出題されたときの書き方のポイントについて別記事で紹介していますので合わせて読んでみてください。
>> 【日本剣道形】1本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】2本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】3本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】4本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】5本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】6本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
>> 【日本剣道形】7本目を筆記で説明しよう!ポイントや注意点を解説
まとめ
今回は「剣道三段とは?合格率や実技・形・筆記試験に受かるコツを解説」と題して、剣道三段の合格率と合格のためのポイントを紹介してきました。
最後にまとめておきます。
筆記試験のポイント
- 自分の考えや経験を書く
- 空白を残さないようにする
- 剣道の知識を身につけておく
実技のポイント
- 礼法を大切にする
- 充実した気勢を出す
- 正しい剣道の足をする
- 残心を示して1本を打ちきる
- 有効打突を取る
剣道形のポイント
- 大きな声で発生をする
- 剣道形の流れを覚える
- 大きくと小さくのメリハリをつける
- 間違えたときは挙手をしてやり直す
剣道三段は、合格率がまだまだ高いといえども、二段より不合格になる確立は高くなります。
不合格にならないためにも、しっかりと稽古を積んで基本を身につけておきましょう。